インタビュー「暮らしを耕すひと」vol.3 野口一樹さん
「-いちごでみんなを笑顔に-いちごの力を信じる農家」野口いちご園 野口一樹さん

真岡市出身。2012年4月に親元就農。以前は福島県で塾の共同経営をしながら講師として働く。合同会社ベリーベリーとちぎ代表。合同会社ベリーベリーとちぎの事業としては出張いちご狩り(会場にプランターごと出張し、いちご園を作る取組)を、真岡グリーンツーリズム推進協議会のサポーターとしてはいちごの就農体験会の事業等を実施。
ベリーベリーとちぎ:https://veryberry-tochigi.com/
いちごの力を最大限に引き出すいちごづくり。
-栽培品種と栽培手法を教えてください。
野口:栃木県の5品種を栽培しています。小売店向けに「とちおとめ」と「とちあいか」、直売向けに「とちひめ」と「ミルキーベリー」、夏秋いちごの「なつおとめ」を栽培しています。このように一年中様々な需要にこたえることができるのは栃木県の強みですね。
無加温*、無電照でいちごにとっては厳しい環境にすることでいちごの力を引き出しています。
*真岡市のいちご栽培では通常、ウォーターカーテン(二重ハウスの内側に13から15度の地下水を流し、ハウス内の温度を保つ設備)により加温をする。
-そのような栽培を始めたきっかけは?
野口:うちのハウスは私が就農した段階でウォーターカーテンで加温しているハウスと加温していないハウスがありました。それぞれのハウスのいちごを比較したところ、加温していないハウスの方が質の良いいちごかなと思いました。さらに収穫量に関してさほど差がなかったので、いちごの質が良い無加温の栽培を選びました。
-農業を営むうえで大切にしていることはありますか?
野口:こだわりすぎないことですね。良いと思うものはすぐに取り入れるようにしています。農家は企業秘密がないので、情報はみんなで共有します。自分が良いと思うことは近いコミュニティに発信していき、逆に近いコミュニティで良いと言われていることはどんどん教わって取り入れていきます。そのために農家コミュニティでのコミュニケーションは大事にしています。
栽培で言えば、いちごの力をよく引き出すということを意識しています。いちごそのものはとても力を持っています。いちごを嫌いな人はなかなかいません。ただ、酸っぱいいちごを作れば食べてもらえません。厳しい環境にしていますが、いちごがその環境に耐えてもっと美味しいいちごになるはずだと思っているから。限界を超えたところまではやりません。いちごの本来の力を引き出すような意識をしています。
顧客が定着しないことには産地は衰退していきます。そのためには見た目や香り以上に、味です。いちごそのものの力で惹きつけないといけませんからね。

いちごで地元に恩返しを。地域を笑顔にするグリーンツーリズム。
-いちご本来の力を発揮できる環境づくりが大切なんですね。グリーンツーリズムはいつ頃始められたんですか?
野口:いつから始めたかといわれると難しいですね。私が就農した段階で直売所販売は行っていました。ただ、廃棄されるいちごがもったいないことから就農3年目くらいまで加工品に力を入れました。4年目くらいから農協販売以外の販路を広げたいということで、販売の戦略を練り、合同会社ベリーベリーとちぎの前身となるようなグループを作りました。いちごを出荷することも大事ですが、7、8年目からは真岡市という産地に人を連れて来ることも大事だと考えるようになりました。本格的にグリーンツーリズム事業を始めたのはそれ以降ですね。
-どのようなきっかけでグリーンツーリズムを始めたのですか?
野口:いちごを使って行政や地域に活気を出せないかと考え始めたことがきっかけです。うちの企業理念は「いちごでみんなを笑顔に」です。ここでいう「みんな」とは誰なのか。私や家族、従業員はいちごがたくさん売れれば嬉しい、おいしいいちごを食べた人も嬉しい。ではそれだけが「みんな」なのかと考えるとそうではありません。
私はたまたまいちご日本一の産地にいるだけで、日本一というのは私の力ではありません。その日本一の産地を作ってくれた人、支えている人という地域の人たちも「みんな」に入れたいと思いました。
地元に対して恩返しをして、地元にも笑顔を広げたい。うちが儲かって笑顔になっても地域が笑顔になるわけではありません。いちご狩りやいちごの販売以外に、いちごを使って地域おこしができないかなというのが根底にありました。
-地元愛を感じますね。
野口:地元がいちごで盛り上がっているからうちが儲かるわけですから、やっぱり地元のおかげ。歴史のおかげで成り立つ商売なので、地域に恩返しをしたいという気持ちはあります。
私が考える地域を盛り上げることの一番はいちご農家が増えることです。いちごに限らずですが、農家が増えなければ農業コミュニティは終わってしまいます。なので私が考えるグリーンツーリズムの最終目標は新規就農者の獲得です。まずはそれを受け入れる土壌を作らなければならないと考えています。

お客さんの生の声が聞こえるグリーンツーリズム。
-ただの観光で終わらせないことが大切なんですね。グリーンツーリズムのやりがいは何ですか?
野口:一つ目はなんといってもお客さんの生の反応を受けられることですね。農家は基本的に一般の消費者と関わることは少ないです。グリーンツーリズムはお客さんが外から来る。普段と違う見方をする人が近くに来ることはとても良いことですね。作ったいちごに関しての生の意見をもらえますし、圃場(ほじょう)に対しての意見ももらえます。普段関わらない人の生の反応が見られるのが一番のやりがいです。
もう一つは、移住者を増やすことが目標なので、グリーンツーリズムをきっかけに真岡市へ移住してくる人が出れば、それはやりがいですね。
農家は消費者の顔が見えない仕事なので、少しでも顔が見える機会があることはすごくありがたいと思います。
-最後に、今後はどのようなグリーンツーリズムに取り組んでいきたいですか?
野口:基本的には着地点が移住になるようなグリーンツーリズムをおこなっていきたいと考えてます。なので本気で就農を考えている人に本気で体験してもらう事業、もしくは、転職の選択肢の一つに就農が入っている人の農業の優先順位を一つでもあげられるような体験会を開催したいですね。午前中に農業を、午後に真岡市内を観光する通年6回の体験会ができれば最高ですね。

取材、文章、写真:植村大吉(真岡市地域おこし協力隊 グリーンツーリズムコーディネーター)
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更新日:2026年07月22日