幼稚園教諭からイチゴ農家へ!猪野 麻美さん

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更新日:2023年03月28日

幼稚園教諭からイチゴ農家へ。職業に囚われず、やりたいと思えるチャレンジを。

イチゴの生産量日本一を誇る真岡市で、「猪野さんちのいちご農園」を営む猪野麻美さん。もともと幼稚園教諭として働き、実家の農家を継ぐ気持ちはなかったと言います。そんな猪野さんがイチゴ農家になった理由とは?いま感じているやりがいや思い描く未来について、お話を伺います。

猪野麻美さんいちご農園前

猪野 麻美(いの あさみ)

真岡市生まれ。短期大学を卒業後、幼稚園教諭として約20年勤務。その後、祖父の代から続く実家の農家で就農し、現在はイチゴの栽培、加工、商品企画、「猪野さんちのいちご農園」の運営など幅広く担当する。株式会社雄 専務取締役。​​尊徳太鼓保存会副会長。

愛情たっぷり、楽しみながら育てるイチゴ

ー猪野さんの今のご活動を教えてください。

 

猪野:真岡市にある株式会社雄で、イチゴの栽培・加工品の販売をしています。私の家は祖父の代から続く農家。2022年に株式会社化し、弟が社長として米、小麦、蕎麦を、私が祖父母、両親と続けてきたイチゴを担当しています。従業員は11人ほどですね。

イチゴは、35アールの土地に、120メートルのハウス3棟、85メートルのハウス4棟を設置して栽培しています。品種は4種類。まずメインで育てているのは「とちおとめ」。みずみずしく歯ごたえがあって、甘みと酸味のバランスが良いです。JAに納品し、全国に出荷しています。次に希少品種の「とちひめ」。比較的水分が多くて柔らかく、デリケートなのが特徴です。流通には向きませんが、ここでしか食べられない観光農園向けのイチゴです。それから県が開発した、白くて甘い「ミルキーベリー」。強い紫外線に当たったり、畑を覆う黒いビニールシートに触ったりすると焼けてピンクになってしまうので、丁寧に扱わなければいけません。手間はかかりますが、貴重で高価なイチゴです。これらに加えて2022年から、「とちあいか」も育て始めました。

 

大事にしているのは、愛情を持って育てることです。苗から手をかけて育てているので、枯れてしまうととても悲しいですし、一緒に育てているスタッフも、実がなったら「可愛くてしょうがない」と言ってくれます。そんな風に育てていることは、お客さんにも伝わると考えています。実際に道の駅などで販売していると、「何時ごろ販売しますか?」「直接農園に行ってもいいですか?」と聞いてくれる方も。リピートしてくださるファンを大切にしています。育てたイチゴを無駄にしないよう、加工品の製造も行なっています。お客さんに手にとっていただきたいので、パッケージにもこだわっていますね。

 

イチゴは11月ごろから収穫が始まると、半年ほど実り続けます。収穫期は休みがなく、夜明けとともに作業を始め、夜まで働く農家さんもいます。しかしそれでは体も心も持たないので、私たちは分業して8時〜17時でなるべく働きやすい環境づくりを心がけています。私自身も、時間をやりくりしてオンオフをつけるようにしていますね。

 

周囲には「楽しんでやってるね」と言ってもらえることが多いです。仕事はちゃんとしているんですよ(笑)周囲から楽しそうに見えているなら、いいなと思っています。

猪野麻美さん室内にてインタビュー

幼稚園教諭を経て、家業のイチゴ農家を継ぐ

ー猪野さんはもともと幼稚園で働かれていたとお聞きしました。どんな経緯で家業の農業をすることにしたのですか?

 

 

猪野:うちは弟がいましたし、最初は全く農業をするつもりはなかったんです。幼稚園に通っている幼い頃から幼稚園の先生になりたいと思っていて、高校卒業後は宇都宮の短期大学へ。資格をとって20年ほど、幼稚園で働いていました。やりがいを持って仕事をしていましたが、園の中で徐々にポジションが上がり、体力的にも大変になってくると、キャリアチェンジを考えるように。

 

小さい頃から、折に触れ家の仕事の手伝いはしていました。友達にイチゴをおすそ分けしたり、春先に学校の授業でうちのイチゴ園にいちご狩りに来て、みんなでイチゴジャムを作ったりすることもあって、人に喜んでもらえる仕事だなとは感じていたんです。

 

家業を継ぐつもりはなくても、運転免許を取るとき父に「軽トラが動かせないと出かけるとき不便」と言われてマニュアル免許を取得していたり(笑)なんだかんだ、農家として働く上で役に立つスキルは身につけていたんですよね。

 

手伝うようになって改めてイチゴを見ると、「このイチゴってどうやってできているんだろう?」と気になってきました。なり方も大きさも全部違うイチゴたち。悪い形ができてしまうのはなんで何だろう?と興味が湧いたんです。始めは手伝いでしたが、「もうちょっとちゃんとやった方がいいのかな?」と感じ始めました。そこから、本格的に農業を始めたんです。

 

ー徐々に農業にシフトしていったんですね。とはいえ全く違った仕事になると思いますが、ギャップはありませんでしたか。

 

猪野:仕事面では、思ったよりも1日が忙しなくすぎるんだなと思いました。もっとゆっくりしているイメージがあったのですが、出荷の時間などが決まっていて意外と忙しくて。それ以外では特に困ることはありませんでした。幼稚園で働いていたときは力仕事も全部自分でやっていたので、「重いものを持ってもらえるんだ!」とびっくりしたくらいです。

 

ただ、幼稚園教諭の時と比べ人との関わりが極端に減ってしまい、寂しかったです。毎日数十人の子どもたちと関わっていたのに、家族や従業員数名としか会わない毎日。不平不満を言う機会も減ったかもしれませんが、小さいコミュニティの中で達成感も減ってしまった感じがしましたね。地域での活動が、そんな状況から私を救ってくれました。

 

ーどんな地域活動をされているんですか?

 

尊徳太鼓保存会です。尊徳太鼓保存会は、二宮金次郎として知られる二宮尊徳先生が、かつて荒廃していた桜町(現真岡市物井)を再興させた功績を全国に発信することを目的に発足。和太鼓の演奏、指導、奏者の育成などを行なっています。一般社団法人日本太鼓協会が主催する全国七人制和太鼓選手権大会では、女子の部で優勝したこともあるんですよ。

 

私が中学2年生のとき保存会が発足し、担当の先生から「今日から太鼓やるよ」と言われて、突然やることになったんですよね(笑)秋祭りや運動会で発表するなど、やってみたら楽しくて。卒業後はしばらく関わっていませんでしたが、大人になってから再開し、練習に通い始めました。新しい曲を覚えたり、叩き方を研究したり、のめり込んで行ったんです。

 

やがて、自分たちでプロデュースして自主公演をするようになりました。やっているときは死んでしまうんじゃないかと思うくらい大変なのですが、見てくれた人たちが「楽しそうにやってたね」「かっこよかったよ」と言ってくれると達成感がありました。尊徳太鼓の知名度が上がることで、真岡のことも知ってもらえる機会になればと思い、様々なところで活動しています。ここでの活動で達成感を得て、地域の人とのつながりを持つことができています。

 

猪野麻美さんがいちごを刈っている

ゼロから商品企画に挑戦

ー仕事だけではなく、地域での活動にもやりがいを持って取り組まれてきたんですね。農家になってからは、どんなことを始められましたか?

まず、インターネット通販と新商品開発を始めました。ネット通販は前々から母もやりたいと考えていたのですが、手が回っていなかったんです。

 

発信を増やしているからか、先日は東京で蒸溜所を運営する方がイチゴを買いに来てくれました。季節のジンを作っているそうで、私たちのイチゴを使ったジンを作って販売してくれています。ほかにも東京の八百屋さんが仕入れの相談に来てくれたりと、販路が広がりつつあります。

 

商品の方は、まずイチゴジュースや冷凍イチゴを開発しました。2022年には、「イチゴミルクの素」を新しく作りました。数年前から友人に、輸入イチゴを使った商品はあるけれど、国産のイチゴを使ったものがないから作って欲しいと言われていた商品です。希少品種の「とちひめ」と砂糖だけで作った、余分なものが入っていない美味しさを味わえます。

 

母の代からのつながりでお願いしている加工所のほか、新しく隣の益子町の加工所にもお願いして商品を作っています。近くに加工所が充実しているのは真岡の強みだと思いますね。傷みやすいイチゴも新鮮なうちに加工することができます。

 

今では、買い物に行って売り場を見ている時も、イチゴの商品のことを考えるようになりました。せっかく1年間かけてみんなで育てるイチゴですから、まだ育っているのに穴を掘って埋めるようなことはしたくありません。余ったイチゴや規格外のイチゴを加工品に回せば、食品ロスにもつながります。まず私たちがいろいろな取り組みをやってみることで、周囲にも加工品にできることを広めていきたいと考えています。

 

幼稚園教諭でも農家でも、やりたいことを形に

ー最後に、今後の展望を教えてください。

今後は直売所を充実させたいと考えています。今も農園で直売をしているのですが、あまり知られていないので。ただイチゴを売るだけではなくて、幼稚園教諭としての経験を生かして本の読み聞かせやイベントなどをして、親子連れが来るスポットにできるといいなと思っています。農と食、子育てが線で繋がるような場所にしたいですね。今も時々、教え子やそのお母さんが立ち寄ってくれることもあるんです。気軽に立ち寄ってもらえる仕組みを作っていきたいです。

 

イチゴづくりは大変なことも多いけれど、イチゴは単純に見て可愛いし、香りも良い。気軽に食べられて喜んでもらえます。作っていて喜びを感じられる作物だと思うんです。関心のある方がいれば、ぜひ真岡でイチゴの成長の過程や収穫のときの喜びを味わっていただきたいです。

 

いま農家になってみて思うのは、農家だから、幼稚園教諭だからという理由でできないことはないということ。子どもたちに関わる仕事をしたいという思いはずっと持ち続けているので、形にしていきたいと考えています。尊徳太鼓も続けていますし、山が好きなのでよく登りにも行きます。どの仕事でも、やりたいことがあるのならうまく時間を使ってやればいいと思うんです。今後もそんな働き方を作っていきたいですし、周りにも広めていきたいですね。

猪野麻美さん会社前

取材、文章、写真 : 粟村千愛(真岡市地域おこし協力隊)

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