もおかのいちごびとインタビューvol.2 事務職から農業に挑戦。地元・真岡市でいちご農家として新規就農

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更新日:2025年07月18日

”経営をしてみたい”という熱い想いから始まった、いちご農家。ゼロから築く就農物語

山口さんが椅子に座って微笑んでいる様子

日本一のいちごの産地として知られる真岡市で、いちごと生きる農家さんたちの想いを伝える【もおかのいちごびと】インタビュー。今回は、新規就農2年目「愛華ベリーファーム」を営む、山口恵梨子さんにお話を伺います。

家族と歩む、2年目のいちご栽培

-現在の山口さんの活動を教えてください。

山口:いちご農家としては今年で2年目です。1年目の栽培面積は50mハウスが3棟、広さは8.6aでした。品種は「とちあいか」で出荷先は主に農協ですが、ハウス近くの道路沿いに軽トラックを置いて無人販売にも挑戦しました。栽培から収穫、パック詰め、無人直売所の管理まですべて家族で行いました。夫は畳店を営みながら仕事の合間に協力してくれ、2人の息子も農作業のサポートをしてくれています。
 

2年目の今年は国の「産地生産パワーアップ事業」を活用し、新たに収穫用の50mハウスを自分たちで6棟建設中です。また、真岡市の「いちご生産施設整備支援事業」を活用して育苗用のハウスも1棟増やす予定です。


屋号の「愛華ベリーファーム」は、かつてこの地でいちごを作っていた祖父の名前に入っていた"愛"と、息子たちの名前に入れた"華"という字をとって名付けました。
私にとって、いちごは子供のような存在なので、大切な家族の名前を屋号に入れました。

育苗ハウスの中の様子
愛華ベリーファームの看板の様子

「いちご、やってみたら?」から始まった、いちご農家への道

-家族みんなで育てる、愛情たっぷりのいちご。屋号の由来にもほっこりしますね。 規模拡大も順調かと思うのですが、昔からいちご農家になろうと考えていたのですか?

山口:いいえ、新規就農をするつもりは全くありませんでした。21年間実家の建設会社で事務員としてやりがいを感じながら楽しく働いていました。ただ、今後の人生の中で自分が挑戦してみたいことは何だろうと考えた時に、自分の力で何か経営をしてみたいという思いが湧いてきました。
そんな時、夫がふと「いちご、やってみたら?」と背中を押してくれて。真岡市出身として、 日本一のいちごのまちで「自分のいちご」を作ることはやりがいのある挑戦かもしれないと思いました。既に家にあった農機具や設備そして立地も含めて、いちごを作る環境が整っていたのも大きかったですね。


就農を考え出してからすぐに行動しました。2022年の秋、応募締め切り間近の「JAはが野新規就農塾」をみつけ、勢いで申し込みました(笑)面接を経て、2023年の4月から1年間、真岡市内の農家さんの元で研修を受けました。基本的に週1回の休日以外は、研修先のハウスで栽培方法やいちごの選別、パック詰めなどを学びました。


研修終了後は認定新規就農者となり、補助制度を活用しながら自分たちでハウスを建てました。中古資材を利用したので、栃木県の「リフォーム支援事業」を活用することができました。初めてのハウス建設は分からないことばかりで大変でしたが、完成した時の感動は忘れられないですね。

新設中のパイプハウスの様子

▲現在建設中のハウスの様子

甘くて濃い、理想のいちごを目指して

―自分たちの手でイチから作り上げた経験があるからこそ、農業への想いも一層強くなりますよね。いちごの栽培でこだわっているポイントはありますか。

山口:土壌は米ぬかや籾殻(もみがら)、豚ぷんなどの有機肥料を使っています。また、専門業者の方に年に2回の土壌分析と、収穫が始まってからは月に1回葉の分析をお願いしています。
味は「甘くて濃い」いちごを目指しています。昨年はシーズン初めに理想に近い味のいちごができたので、シーズンを通して安定した味を維持できるようにしたいです。


無人直売所を通じた出会いも、やりがいのひとつです。ある日、直売所の料金箱の中に手書きのメッセージが入っていて、味の感想と感謝の気持ちが丁寧に書かれていました。それを読んだ時の気持ちは一生忘れないですね。本当に嬉しかったです。「こちらこそ幸せをいただきました。」と返事を書き直売所に貼っておきました。すると、後日その方が訪ねてきてくれてお会いすることができました。そのメッセージは、いちご作りの原点として今も大切にしています。
自分のいちごが、誰かの暮らしの中で喜ばれていると思うと、本当に嬉しくなりますね。

ジャム用いちごを直売所で販売している様子

▲2025年1月、シーズン中の直売所の様子

軽トラックを活用した直売所の様子

いちご農家として思い描く夢

―理想の味への探求と、お客さんとの出会いが、山口さんのいちご作りの原動力になっているんですね。今後、挑戦してみたいことはありますか。

山口:まずは、栽培面積の拡大を進めていきます。今のところ12棟を計画しています。そして設備では選果場の建設、自動ラップ機、トラクターの導入を予定しています。
また、自分のいちごの味が安定してきたら観光いちご園にも挑戦したいです。直接お客様と話し、触れ合う機会を大切にしたいですね。


そしていつか、「食」で人が集まる「場」を作りたいと思っています。美味しいものは人の心を豊かにしてくれます。「食を通じてたくさんの人と繋がりたい」これが私の夢です。

山口さんが育苗ハウスで作業をしている様子

いちご農家を目指す人に伝えたいこと

―山口さんがつくる"食を通じた繋がりの場"がどんな風景になるのか、今からとても楽しみです。 最後に、就農を考えている方に伝えたいことを教えてください。

山口:まずは「補助制度」を調べておくことをおすすめします。
私は1年目に真岡市の「いちごスマート農業推進事業」を活用し、圃場管理システムの「ファーモ」を導入しました。今年度は「農畜産物販路拡大等支援補助金」を使って直売所とハウスの入り口に看板を設置しました。
真岡市は、いちご栽培に特化した制度が充実していて、申請から採択までのスピード感もあります。これはいちご日本一の地ならではのメリットだと思います。


また、真岡市にはたくさんのいちご農家さんがいて、それぞれやり方やこだわりが違うので自分に合った方法を見つけることができると思います。横の繋がりが強く、気軽に相談できる環境があるのは本当に心強いです。
そして、試行錯誤しながら「自分のいちご」を作っていくという農業のやりがいを、是非多くの人に知ってもらいたいと思います。
 

山口さんが育苗ハウスで作業をしている様子
補助金を活用して新しく設置された直売所の看板

▲新たに設置した直売所の看板

 

「仕事はたのしく!」をモットーに、楽しみながらいちごを育てる山口さん。【もおかのいちごびと】インタビューは、これからもそんな"まちのつくり手たち"の声を伝えていきます。

 

山口 恵梨子さんプロフィール

真岡市出身。建設会社の事務員として21年勤務。その後、"自分で経営をしてみたい"という想いから2024年の4月に新規就農。いちご農家としてスタートを切った。


取材、文章、写真:及川 瞳(真岡市地域おこし協力隊   いちごのまちコーディネーター)

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