ハンドメイドを続けて講師、イベント主宰者に。待っていてくれる人がいる。まちつくインタビューvol.16中畑恵さん

更新日:2023年10月31日

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栃木県真岡市で、まちづくりに取り組む方々の想いを伺うインタビュー!今回は、カルチャースクール・雑貨店「Strawberry Drop」店主の中畑恵さん。紙で作るバラのアクセサリー「ロザフィ」や、紙バンドやPPバンドを使ったバッグ作りなど、多彩なハンドメイドの技術と資格を持っています。趣味が高じて自らイベントを主宰し、今では講師として市内外で講座を持つようになったそう。中畑さんがまちで活動を始めたきっかけとは?お話を伺います。

カルチャースクール・雑貨店StrawberryDropの前で微笑む中畑さん

中畑 恵(なかはた めぐみ) craft shop Strawberry Dropオーナー/イベント主宰者

栃木県宇都宮市生まれ。高校卒業後、書店などで働きながらハンドメイドを続ける。結婚を機に真岡で暮らし始め、ハンドメイド作品の販売を開始。他の作家とのつながりを生かし、イベントを主宰するようになる。今では年間10を超えるマルシェやイベントを主催。真岡市民講座、カルチャースクール講師。

 

Strawberry Drop blog:https://ameblo.jp/15-ichie-megu/

 

 

ゼロが100になるハンドメイドの面白さ

ー中畑さんのご活動を教えてください。

 

カルチャースクール・雑貨店「Strawberry Drop」を主宰し、ハンドメイドの講師とイベントの企画・運営をしています。

 

昔からものづくりが好きで、さまざまなハンドメイドやハンドクラフトの資格を持っています。2023年現在は、紙で作るバラのアクセサリー「ロザフィ」と、紙バンドやPPバンドを使ったバッグづくりをメインに店で講座を開いています。出前講座では、さまざまな素材に紙を貼ってデコレーションするデコパージュ、キャンドルづくりも教えています。

 

講座ではみなさん、作っている間はちゃんと出来上がるか不安で、「これで大丈夫ですか?」と聞かれることが多いです。でも、大丈夫。最後には出来上がりますから。

 

先日は、店に3世代のご家族がいらっしゃいました。おばあちゃんの誕生日だから一緒に何かしたいと、店を検索して来てくれたのです。3人ともそれぞれ違うものを作って、作品を持って写真撮影をしました。記念になったと思います。教え終わって作品が形になった時、「できた!」と喜んでいる顔を見るのがやりがいですね。

 

店やカルチャースクール、公民館などでの講座のほか、イベントの企画運営もしています。下野市のグリムの館を中心に、栃木県内の宇都宮市、益子町、真岡市で、ハンドメイド作家さんを集めたイベントを年10回以上開催しています。私も出店するので、自分の作品が売れることも嬉しいですし、他の作家さんが作品を販売できて喜んでいるのを見られると嬉しいですね。イベントの開催を待っていてくれる作家さん、お客さんがいることがやりがいです。

 

ーハンドメイドに興味を持ったのはいつですか?

 

小さい頃から、母の影響で手芸が好きでした。中学生の頃には、フェルトでマスコットを作ったり、毛糸で手袋を編んでみたり。高校生になると、自分で洋服を縫い始めました。高校の制服はボレロだったので、セーラーカラーに憧れてワンピースを作ったこともありましたね。

 

でも、それが仕事になるとは知らなくて。理数系が得意だったので、臨床心理技師の資格が取れる医学専門学校に進学。学校には2年間通いましたが、勉強に追いつけず結局やめてしまいました。アルバイトしていた書店にそのまま就職し、学生時代からお付き合いしていた夫と結婚して、真岡市に引っ越しました。

 

ーその間も手芸は続けていたんですか?

 

ずっと趣味として続けていました。学生だったころは、学割のきく生地屋さんに通い詰めて服などを作っていましたね。はじめは本などを買って作り方を見て作りますが、こっちの方が良いよね?とだんだん自己流になってくるんです。失敗することもあるんですけど(笑)でも自分でより効率的なやり方を考えてうまくいくと、「やった!」と嬉しくなります。より良い方法を編み出すのが楽しいですね。

 

何もなかったところから、自分が作ることで新しいものができる。手作りの良さは、ゼロから100になるところだと思います。

インタビューに答える中畑さん

好きで続けたイベントが闘病のモチベーションに

ーずっと好きで続けていらっしゃったんですね。そこから、販売しようと思ったきっかけはありますか?

 

ある人に、「マルシェをやるから品物を出してみようか。作ったものが売れるよ」と声をかけてもらったことがきっかけです。出店してみると作ったものが売れて、自分でも販売してみたいと思うようになりました。

 

でも、近くでマルシェのようなイベントはありません。フリーマーケットが流行ってきたころでしたが、愛情を込めて作っている作品なので、フリーマーケットとは一線を画して販売したいと感じていました。そんな時、ある店舗で作品を販売できることになったのです。お客さんの好みがわからなかったので、木を切ったりペイントしたりもして、いろいろな作品を作りました。販売してみると予想以上にお客さんが来てくれて作品も売れ、年に2回、定期的に開催できることになりました。

 

3年ほど続けたころ、保険会社で仕事することになり、そのお店でのイベントは終了することにしました。しばらく仕事に集中しましたが、やはり作品を販売するイベントをやりたいという衝動があるんです。真岡でどこか場所を借りられないか探して、お友達が勤めている市内の医院の2階を貸してもらったり、住宅展示場を会場にしたりしてイベントを開きました。

 

活動を知った方が下野市のグリムの館でイベントをやらないかと声をかけてくださったのです。元々その方がイベントをしていたのですが、辞めるから引き継いで欲しいとのこと。真岡からも近いので、グリムの館を拠点に活動するようになりました。

 

はじめは自分でいろいろな種類の作品を作っていましたが、お客さんと話すと、「私もこういうものを作っています」と教えてくれる方が多数いました。それぞれ得意なものがあるなら、全部自分で作るよりも得意な人に出店してもらった方がいいと思い、いろいろな作家さんを呼んで開催するようになったのです。おかげさまで、グリムの館でのイベント開催回数は、35回になりました。

 

ーご自身で働きかけてイベントを作ってこられたのですね。企画は大変ではなかったですか。

 

やりたいことができているから楽しかったです。ものを作って、お客様に喜んで手にとっていただけるのが嬉しかったので、大変だとは思いませんでした。私は家でぼーっとしたり、テレビを見たりする時間があれば、好きなことをしていたいんです。仕事が終わったらすぐ家に帰って、手早く家族のご飯を作って、手作りの時間を確保していました。子育てもしていましたが、子どもは子ども、自分は自分で、やりたいことはやっていましたね。

 

イベントをやっていく中でも、作家さんが集まらないとか、お客さんがすごく少ないとか、大変なことはいろいろありました。でも、やめようと思ったことはなかったです。

 

来てくれたお客さんに御礼と次回開催のハガキを送ると、「ハガキがくると冷蔵庫に貼ってるのよ」と言ってくれる方がいたり、開催予告を新聞に掲載してもらうと「新聞見たわよ」と言ってくれる方がいたり。待っている方がいると思うと嬉しくなり、続けるモチベーションになりました。

 

2008年ごろ、卵巣がんを患ったことがあるんです。子宮を全て摘出しなければならず、仕事を休んで入院していました。がんになると、鬱になってしまう方も多くいると聞きます。でも、私は病気に悩んでいる時間はありませんでした。8月に手術の予定でしたが、11月にはすでにイベントが決まっていたからです。作家さんもお客さんも待っていると思うと、落ち込んでいる暇はない!と前向きになれました。手術は無事終わり、仕事に復帰して11月には予定通りイベントを開催。近況を話すと、お客さんは「全然病み上がりの顔してないけど、でも大丈夫なの?」と驚いていましたね(笑)。みんなが待っていてくれる、それがモチベーションになりました。

インタビューに答える中畑さん

店を拠点に、真岡での活動が広がった

ー真岡にお店をもたれたのはなぜですか?

 

最初は偶然だったんです。東日本大震災があったとき、家の基礎にヒビが入ってしまい、新しい家を建てることになりました。真岡市内で土地も見つかり、図面を作っているとき、夫から「お店のスペースはいる?」と聞かれたんです。自分のお店を持つなんて考えてみたこともありませんでしたが、イメージするとどんどんやりたいことが浮かんできたんです。二つ返事で「うん」と答えました。

 

作品の販売と講座の開催をメインにお店をオープンさせました。自分の作品も販売しましたが、他の作家さんの売り場を特に充実させました。イベントに出店してくれている作家さんは、作品を発表する機会が年に数回しかなく、もっと作品を販売したいと考えている人もいました。加えて、作品を作っているけれど対面が苦手でイベントには出てこない方もいたので、そういう方々の作品の販売を請け負ったのです。

 

ただ、ハンドメイド作品は生活必需品ではありませんし、毎日お客さんがくるわけでもありません。やってみるとずっとお店を開けているのが大変で、自由に外にいけない息苦しさにストレスを感じるようになりました。作品の出入りも少なかったので、予約を受け付けて店を開ける形に変更しました。そうすることでストレスなく運営できるようになりましたね。

 

いろいろな講師の資格を持っていたので、最初からハンドメイドの教室も開いていました。

近所をお散歩しながらお店でお買い物してもらおうと、「お散歩マルシェ」を年4回企画。近隣の方にもチラシを配り、雑貨屋さんという認知が広がりました。お店を見に来てくれた方との繋がりで、夏休みには小学生の子どもたちの粘土教室も開くなど、いろいろな取り組みができました。

 

そのうち、真岡市の市民講座にも講師として呼んでいただけるように。「先生」と呼ばれると嬉しいですね(笑)。ほかにも、さまざまな場所で講座を持つようになりました。地域の方に楽しんでもらうために、ボランティアで行っているものもあります。たとえば、栃木県高根沢市の地域生活拠点施設、けやき館。社会福祉法人光誠会のケアハウスフローラに併設された施設で、2009年から地域の方向けに講座を開いています。

けやき館での講座の様子

けやき館での講座の様子

2022年には、真岡まちづくりプロジェクトとコラボしてお散歩マルシェを拡大し、五行川沿いのRIVER+で屋外イベントを開催できました。普段は屋内が多いので、キッチンカーなどを呼んでやる屋外イベントは新鮮でした。

 

地元の真岡で活動したいとずっと思っていたので、来てくれた方々が作品を手にとったり、美味しそうに食べたり遊んだりしているのを見て「やってよかった」と思いました。

2022年のお散歩マルシェ。多くの人でにぎわった

2022年のお散歩マルシェ。多くの人でにぎわった

真岡でハンドメイドを楽しむ拠点に

ー最後に、今後の展望を教えてください。

 

どれくらい続けられるかは分かりませんが、今の活動を続けていきたいと思います。真岡には手芸店がなく、作家さんの拠点がありません。お店を続けていくことで、ハンドメイドを楽しむ人たちの拠点になれればと思います。

 

イベントも、できるだけ長く続けたいですね。作家さんたちの発表や販売の場、横のつながりをつくる場になるからです。加えて、開催地と作家さんとのつながりをつくるきっかけにもなります。たとえばお散歩マルシェには、市外から参加してくれる作家さんも多いです。作家さんも、作家さんが連れてきてくれるお客さんたちも真岡に来てくれます。真岡を知ってもらうチャンスですから、せっかくならSLや駅舎を見るとか、大前神社の大恵比寿様を見るとか、観光もかねて楽しんで欲しいと思います。地元である真岡の良いところを伝え、知ってもらうきっかけになると良いですね。

 

店での活動やイベントを通して、作家さんの発表、販売の場をつくり、つながりを生み出して、ハンドメイドを楽しむ人をサポートしていきたいです。

ハンドメイド作品を紹介してくれた中畑さん

取材、文章、写真 : 粟村千愛(真岡市地域おこし協力隊)

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総合政策部 プロジェクト推進課 まちづくり推進係
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