寺子屋ドーナツ、スマホ相談会、空き家のリノベーションに、清掃活動や高校生カフェ…真岡まちづくりプロジェクト(まちつく)の4期生は1年間、さまざまな活動をしてきました。まちつくを通して何を感じ、考えてきたのでしょうか。高校生カフェの発案と実行など、精力的に活動した高校生の3人に、活動を振り返ってもらいました。
田崎 陽菜(たさき ひな)上三川町出身。真岡女子高校3年生。2期からまちつくに参加。
土井 心結(どい みゆ)真岡市出身。真岡女子高校3年生。生徒会長を務めた。
若林 瑛達(わかばやし えいたつ)宇都宮市出身。真岡高校3年生。生徒会長を務めた。
学校の外にフィールドを求めて
まちつくに参加したきっかけを教えてください。
田崎:高校2年生のときに、募集をみて入りました。私は真岡市の隣の上三川町出身で、小学生の時からKLC(上子連)に入り、高校生などと一緒に地域で活動していました。真岡女子高校に入って真岡に通わせていただいていますが、地域のために何もできていないのが嫌だなと感じていて。ちょうど募集のチラシにセーラー服の女の子が描いてあって入りやすく感じて、友達と一緒に申し込みました。
若林:市役所の青空ステーションで勉強していたときに、まちつくのワークショップを見たのがきっかけで参加しました。高校2年生の5月でした。それまでの自分は、真岡高校というある意味閉鎖的な空間で、サッカー部としか関わっていなかったため、他の高校の生徒や大学生などいろいろな人が集まっているのを見て「面白そう」と感じました。
土井:私はこの2人に誘われて入りました。ちょうど生徒会長になったばかりの頃、伝統的に真岡高校の生徒会長に挨拶に行ったとき、(若林に)誘われて。同じクラスの田崎もいたし、なんでもやってみようと思うタイプなので、まずイベントに参加してみることに。何回か行ってみたらすごく楽しくて、本格的に活動するようになりました。
若林:土井心結と会う前から、自分たちの代では文化祭で女子校と一緒に何か大きいことをやりたいと思っていて。土井心結も同じことを考えていると知って、文化祭の前に連携して何かやる機会があるといいなと考えてまちつくに誘いました。田崎さんがずっと中間ポジションにいてくれたこともあり、一緒にやろうぜ、と。
土井:そうそう。文化祭は、真岡高校の女装コンテスト「ミス白布」で真岡女子高の生徒会長が審査員をするのが恒例だったのですが、今年は企画段階から連携して司会も担当しました。
住民との出会い、同志との出会い
寺子屋ドーナツやスマホ相談会など2期目で生まれた企画をさらに盛り上げただけでなく、学校を超えて高校生を巻き込んだ「清掃中」を始めたり、「高校生カフェ」を企画して実現させたりとさまざまな取り組みをしてきました。その中で特に心に残ったことは?
若林:初めて関わった、2023年夏の寺子屋ドーナツですね。他校の高校生と話すと、同じ年代だけど考えていることが全然違っていて新鮮でしたし、大学生と話すと全然違う世界なんだと感じました。でも、考え方が違っても疎外されている感じはなくて。お互い違うことをして違うことを考えていても、「まちづくりをやりたい」という点でつながっている感覚があって、それが面白かったです。
子どもたちも、すごく懐いてくれたんですよ。他人の子どもの親から感謝されることなんて今までなくて、「なんだこれは」と(笑)。このあいだも、真岡を散歩していたら、参加してくれていた子が庭で遊んでいて声をかけられました(笑)「本当のお兄さんみたい」と言ってくれた子がいたので、どうせなら規模を大きくして活動しようと思い、「真岡のお兄さん」を名乗っています。真岡市という地域と自分とのつながりができた感覚がありました。
▲高校生・大学生が小中学生に勉強を教える「寺子屋ドーナツ」。毎回募集と同時に申込が殺到する人気企画になった
田崎:私はスマホ相談会ですね。年齢が上の方とお話しするのが新鮮で、面白かったです。ここのクーポンが便利とか、この日はこのスーパーがいいよとか、いろいろな話を教えてくれて。私が全然知らないことを知っているので、知識が広がりました。ずっと助産師になるのが夢だったのですが、もっと地域と関わりたいと感じるようになり、保健師を目指すようになりました。
▲「スマホ相談会」では、地域のお年寄りに高校生・大学生がスマホの操作などを教えている。お困りごとに応えるだけでなく、おしゃべりにも花が咲く
土井:私は、夏に開催した高校生カフェです。田崎が発案してガッツリ進めていたイベントです。
田崎:私は元々料理が好きだったので、まちつくのワークショップでドーナツを使ったまちづくりを考えるチームに入りました。でも、結果的にチームでは寺子屋ドーナツをやることになって、ドーナツ自体は作れなくて(笑)。寺子屋は楽しかったのですが、自分たちでお菓子を作る企画をやりたい気持ちがありました。高校生のうちに「高校生カフェ」をやってみたいと思い、2024年の夏に実現しました。100人以上の方にお越しいただき、売り上げも黒字にすることができました。
▲高校生カフェ。メニューは田崎さんが考案、早朝からメンバーと手作りで準備した
土井:このイベントをお手伝いする中で、まちつくに関わる大人があたたかいなと感じて心に残りました。学校では、先輩たちが何かやりたいと言っても危ないからダメと言われるのをみていたので、そういうものなんだと思っていました。でも、カフェを考える中で何かやりたいというと、大人メンバーが「いいね、やってみよう」と一緒に考えてくれて。頭ごなしに否定するんじゃなく、かといって大人がやってしまうというのでもなく、サポートしてくれるのがあたたかかいなと感じたイベントでした。
当日は、地域の人、寺子屋で知り合った方などが来てくれました。活動を通して私たちは地域を盛り上げたいと思っていたけれど、地域の人にも支えられてる。お互いに支え合っているんだなと思いました。
地域とつながり見えてきた自分
まちつくを通してさまざまな体験をした3人。参加する前後でどんな変化がありましたか?
若林:真岡のことを考えるようになりました。元々興味はあったけれど、それを話せる友達ができたのが大きかったです。この前も、大学生の先輩たちと葵一家さんに行ってラーメンを食べているときに、「スマホ相談会、もっとああしたいよね」という話になって。そういう話をフラッとできるんですよね。話しているうちに、自分はどんなまちにしたいかもわかってきました。
田崎:私は、参加した最初の頃は、内向的で人と目を合わせられなくて、いつも先輩の後ろに隠れているような感じでした。それが寺子屋で若(若林)と話し始めたくらいから、メンバーと話すのが楽しくなって。知り合いから友達になっていく感覚が面白くて、人と話せるようになりました。今は、コミュニケーションを取るのは楽しいし、大切なんだと感じています。
土井:私は「自分の過ごしやすい環境は自分でつくれる」と思えるようになりました。これまではどちらかというと、置かれた場所で咲く精神で生きていたんです。でも、高校で活動する中で「まちを盛り上げたいのは自分だけなのかな」と感じることが多くなってきて。そんな時にまちつくに参加したら、同じ方向を向いている人がたくさんいて、すごく活動しやすくなりました。与えられた環境にいるだけじゃなくて、外に出ることで変わることもあるんだと知りました。
中学生の頃から、校則やルールや慣習のここが嫌だと愚痴り合うことがありました。でも嫌だって言うのに何もしないのは変だなとずっと思っていて。自分がいる環境が嫌なら変えちゃえばいい。どうせやるなら楽しくやろう、本気でやろうといつも思っています。今は学校から地域へと、関心が広がってきました。真岡は何もないって言うけれど、知らないだけかもしれない。何もないと思うなら盛り上げればいい。楽しく過ごしやすいと思える環境をつくっていきたいと思います。
まちでの学びを胸に未来へ
活動からいろいろな刺激を受けて、変化していったのですね。最後に、今後の展望について教えてください。
田崎:私は春から看護学部に通います。これまで地域の人に支えられてきたので、地域と関わることのできる保健師になって、少しでも恩返しができればいいなと思っています。直接まちづくりに関わるわけじゃないかもしれないけれど、地域の人たちも人生のどこかでは病気になったり、病院にかかることがあるはず。それをサポートすることで、地域を支えていきたいです。
土井:私は経営学部に進学します。生徒会をやってみて、組織の中での人の動かし方や人間関係の難しさを実感しました。一方で、まちつくではそれが円滑で綺麗だなと感じていて。なので大学では、組織の人間関係の作り方を学びたいと考えています。そこで学んだことを活かして、将来はイベントの裏方をしてみたいですね。イベントを通していろいろな人を楽しませて、笑顔にするのが大好きなんです。人と人をうまく結びつけられる人になって、地域とイベントを組み合わせた会社をつくりたいと思っています。
若林:最近、小学校の頃に地元の水質調査をしたときのことを思い出したんです。イガリくん、と呼ばれていた高校生がいたなあと。その存在が心に残っています。小さい頃に、宇都宮市の氷室の祭りに連れていってもらったことも覚えていて。そういう経験が、まちづくりに興味を持つきっかけだったのかもしれないと振り返るようになりました。2人(田崎、土井)も、それぞれルーツがあって、まちつくに参加しているんですよね。
小さい頃に参加した地域のイベントや活動が、まちに興味を持つきっかけになる。今は、そのきっかけをつくれる大人になりたいと思っています。どう実現していくかはまだわかっていません。春から大学生になるので、まちと人についてより深く学んでいきたいです。いつか真岡で、子どもたちが地域と関わるきっかけづくりをしたいですね。「真岡のお兄さん」として市の公式アンバサダーになるのが目標です!
まちつく4期生インタビュー学校を出て見つけたつながりと目標 (PDFファイル: 1.4MB)
取材、文章、写真 : 粟村千愛(真岡市地域おこし協力隊)
更新日:2025年04月09日